前が見えない練習が、迷わない走りを作りました
夜行バスが、線の消えかけた道に入って運転手さんの手がきゅっと締まります。教習の先生は練習中、フロントガラスに小さな目隠しシールを貼ります。見える場所が毎回ずれて、運転手さんは色んな手がかりで走る癖がつきます。
道が見慣れてくると、楽な見方に頼りがちです。あの標識だけ、このひび割れだけ、みたいに覚えてしまうと、少し変わっただけでふらつきます。写真や文字を見分ける大きな仕組みも、練習の見本を丸暗記して、新しい場面で外すことがあります。
面白いのが、覚えている最中にわざと一部を休ませるやり方です。中で働く小さな担当が、そのときだけ黙る感じです。バスの練習なら、先生が貼る目隠しの場所を毎回変えます。運転手さんは、ひとつの景色だけに頼れなくなります。
目隠しがないと、中の担当どうしが「いつもの相棒がいる前提」で動いてしまうことがあります。で、相棒が消えたら急に弱くなります。目隠しがあると、相棒がいない回も普通に来ます。だからどの担当も、色んな並びでも役に立つように育ちます。たくさんの手がかりで支えるのがコツです。
じゃあ本番はどうするの、となります。本番では目隠しなしで全部を使います。ただし一個の手がかりを信じすぎないように、全体の勢いを少し抑えて判断します。練習で「どれかが欠けるのが当たり前」だった感覚に近づけて、一回で落ち着いた答えを出します。
この癖がついた運転手さんは、線が薄い道でも、光が変わっても、目印がなくても真ん中を保ちやすくなります。新しい道での失敗が減る感じです。新しいバスでも新しい道でもなく、練習でわざと欠けた景色に慣れておく工夫が、身近な読み取りや仕分けの道具を少し頼もしくしていきます。