重ねた透明シートが教えてくれた、立体画像のうそ
屋根の窓に雨が当たって、細かい音がします。修復の人が、薄い透明シートを何十枚もライトの上に重ねていました。灰色のにじみが少しずつ描かれていて、そろうはずなのに、1枚でもずれると影がぶれてしまいます。
CTの立体画像も、薄い断面の重なりでできています。すい臓のがんは周りと色の差が小さくて、断面だけ見ても見分けにくいことがあります。例も多くは集められないので、1枚ずつそれっぽい断面を増やしても、重ねると形が飛んで見えることがありました。
そこで、まず本物のCTをそろえました。大きさの目盛りを合わせて、見たい明るさの範囲にしぼって、金属でギラッと跳ねた部分は同じ画像の中の自然な明るさに置き換えます。次に、決まった大きさの小さな立方体だけを切り出して、見た目の手がかりに集中させました。
面白いのが作り方です。1枚ずつ作るのでなく、立方体のかたまり全体をいったん小さく見て形をつかみ、また細部まで戻しながら、途中で近道みたいなつなぎを残してズレを防ぎます。シートに置き換えると、断面がシート、にじみが模様、近道のつなぎが位置合わせの印です。重ねて作ると、立体がぶれにくいです。
次の悩みは合体でした。がんの立方体と、すい臓の立方体は別々にできるので、境目が出ます。シートの束で言うと、別の束から黒い染みの形だけ切って差し込む感じです。切って貼るだけだと線が出て、境目をなだらかにして、最後は周りの質感も少し直して、最も自然につながりました。
出来の確認も、1枚だけでは終わりません。いろんな向きの断面で似ているかを見て、立方体まるごとをひとつの物として比べる点検も入れました。束を手で持って回して、影が安定しているか確かめる感じです。ただ、その比べ方は医療画像で育った目ではないので、まだ仮の物差しです。
この立方体を練習用に足すと、がんか健康かを見分ける仕組みが前より当たりやすくなりました。少ない本物だけで苦しかった場面で、数とバランスを補えたからです。ライトの上でシートがきれいにそろうと、1枚の見た目だけじゃ見えなかった安心感が、ちゃんと残りました。