白紙の巡回ノートが、強い一手を見つける夜
夜の静かな館内で、警備員さんが薄暗い廊下を歩きます。手元のノートは白紙で、要注意人物の名簿もありません。壁に貼られた館内ルールだけを頼りに、次にどの廊下へ行くか決めます。これが、ルールだけから強くなる仕組みのたとえです。
前に強かった仕組みは、分厚い手引きの束みたいでした。人が作った注意リストや、お決まりの場面集や、終わり方の辞典を抱えて動きます。警備員さんで言うと、片っ端から扉をのぞいて走り回る感じで、速いけど準備が大変でした。
面白いのが、新しいやり方は手引きに頼りにくいところです。頭の中に、二つの感覚を育てます。次に見に行くと良さそうな扉をいくつか指さす感覚と、今の流れが落ち着いているか怪しいかをざっくり見立てる感覚です。つまり、全部を見ないで目を向ける場所を絞ります。
それでも勘だけだと不安なので、警備員さんは候補の廊下を少しだけ先まで確かめます。指さしの感覚が、先に試す順番を決めます。見立ての感覚が、先が読みにくい場所で背中を押します。戻って考え直して、良さそうな道を残すので、当てずっぽうより強い選び方になります。
夜勤が終わるたび、警備員さんはノートに書きます。静かに終わった夜と、落ち着かなかった夜で、どの巡回が効いたかを見比べます。次の夜は少しだけ直して歩きます。この繰り返しで、扉の選び方と見立てがだんだん育っていきます。
古いやり方は、すごい速さで大量に確かめる強さでした。新しいやり方は、確かめる回数は少なめでも、見どころを選ぶのが上手です。警備員さんで言うと、危なそうな角を先に一回見ておく感じで、小さな確認が大きな困りごとを減らします。
夜の終わり、警備員さんのノートは手引きの束ではなく、よく当たる勘と確かめ方で埋まっています。走り回って全部を見る強さじゃなく、目を向ける場所を学んでから少し先を確かめる強さです。違う建物でも、このやり方は持っていけそうだな、と感じます。