夜明けの桟橋で、島の荷物が足りなくなる前に
夜明け前の桟橋で、運航係はクリップボードを抱えて小舟の列を見ています。島ごとに明日の運航に要る箱が決まっていて、表に合うように今日の箱を配ります。島は仕事、箱は材料で、この表が回る仕組みです。
紙の上なら、初日の配り方はいくつも試せます。面白いのが、どの島も置いていかれにくい配り方が一つあることです。別の配り方だと、しばらく順調に見えても、どこかの島で帳面がマイナスになり、「ない燃料を約束した」みたいになります。
でも島には人がいて、箱は毎日ぜんぶ戻ってくるわけじゃありません。昔の書き方だと、計算の途中でマイナスの箱が出てしまい、桟橋の現実と合いません。そこで毎日、表が言う量の一部だけを出して、残りは島で使う、という決め方にします。
それでも元の表は数字に弱くて、遠い日を追うと急に変な答えになりがちです。運航係は同じ関係を、今度は「行き先の割合の表」に言い換えます。最初の箱の置き方も、重みをそろえて対応させます。すると、最初にマイナスが出る日と島は、その対応のしかたの中では同じまま残ります。
割合の表で考えると、別の見え方が出ます。旅人がその割合どおり島を渡り歩くと、長くいる島と、すぐ通り過ぎる島が分かります。運航係は「行き先として選ばれやすい」と「出ていく先として頼られる」を合わせて、柱の島と弱い島を並べ替えられます。
町長が来て、「箱の偏りを変えたい。でも不安定さの合図は失いたくない」と言います。運航係は、割合の表が変わらないように元の表の数字を組み替えます。狙った配り方が新しい基準になっても、どの島が先に苦しくなるかの見張り方は保てます。
空は明るくなっても、海が急に優しくなるわけじゃありません。運航係が、壊れやすい帳面だけを信じるのをやめて、同じ中身を持つ「割合の地図」で確かめるようになっただけです。現実を変えずに、計算の言葉を変えると、危ない合図が見えやすくなります。