同じ芝居を、小さな発電機でやり切る夜
古い旅回り劇団の細い裏通路で、スタッフみんなが小さな発電機を見つめていました。今夜の野外公演はこれで回すしかありません。やりたいのは新作じゃなく、いつもの物語を少ない電力と荷物で届けることです。
困るのが照明でした。前の場面を思い出させるスポットと、次の流れを作る早い群舞が交互に来ます。たまに一瞬だけ光が跳ね上がって、安い調光だとそこだけつぶれて全体が変に見えます。
霧や色のフィルターも厄介です。操作が段階式だと、なめらかな空気が急にガタつきます。つまり、細かい調整が必要な所ほど、雑にまとめると崩れやすいんです。面白いのが、全部を同じやり方で小さくしても安定しない点でした。
まず調光を、丈夫だけど段が少ないつまみに替えました。軽くなったのに、強すぎる一瞬の光がまだ邪魔です。そこで光がつまみに入る前に明るさをならして、たまのピークは少し切って、他が変にならないようにしました。
時間が少しだけ取れる日は、全体の稽古はしません。効き目の大きい数か所のつまみだけ、短く合わせ直します。舞台の骨組みはそのままに、ズレやすい所だけ手当てする感じです。
人数も減らす必要が出て、小さな座組に看板役の真似をさせました。拍手が来る最後の空気感を覚えさせる日もあれば、途中の間の取り方を横でなぞらせる日もあります。客席から見える動きだけでも教えられました。
でも珍しいアドリブまで全部追わせると、若手は迷って台詞が弱くなります。いつも通りの強い選び方を真似して、実際に口にした台詞にだけ返事をもらう方が締まりました。小さくしても同じ芝居に聞こえる道は、細部の全部コピーじゃなかったんです。
小道具は重複を外し、似た役はまとめ、あまり効かない短い場面は落としました。長いおさらいは客席の様子で飛ばして、進みを軽くします。本番では若手が次の台詞を小声で先に出し、看板役が採用か修正をして前へ進みました。大きい劇場だけじゃなく、小さな公園でも同じ物語が回る夜になりました。